投資信託の「分配金」は再投資すべき?受取型のメリット・デメリット

投稿者: | 2025年10月20日

投資信託を保有していると、定期的に「分配金」が支払われることがある。口座に振り込まれた分配金を目にすると、利益が確定したような喜びを感じるかもしれない。しかし、その喜びと同時に「このお金、どうするのが一番賢いのだろう?」という疑問を抱く人も少なくないだろう。実は、この分配金の取り扱い方一つで、将来の資産形成に大きな差が生まれる可能性があるのだ。

本記事では、NISAと投資信託に精通したファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、分配金の「再投資」と「受取型」のそれぞれの特徴、メリット・デメリットを徹底的に解説する。シミュレーションを交えながら、あなたの投資目的やライフステージに合った最適な選択ができるよう、具体的な指針を示していく。

そもそも投資信託の「分配金」とは?

分配金とは、投資信託の運用によって得られた収益の一部を、決算時に投資家(受益者)へ還元するお金のことである。その原資は、主に以下の2つから成り立っている。

  • 普通分配金:投資信託の運用で得られた利益(株式の配当金や債券の利子、値上がり益など)から支払われるもの。これは投資家の利益とみなされ、課税対象となる。
  • 特別分配金(元本払戻金):運用が不調で利益が出ていない場合や、分配金を出し過ぎた場合に、投資家が払い込んだ元本の一部を取り崩して支払われるもの。これは利益ではなく元本の返還であるため、非課税となる。

「分配金がたくさん出る=良い投資信託」と安易に考えるのは危険である。特に特別分配金が続いている場合、実質的に自分の資産を取り崩しているだけ、ということになりかねない。まずは自分の受け取る分配金がどちらに該当するのか、運用報告書などで確認する習慣が重要だ。

選択肢は2つ!「再投資型」と「受取型」

分配金の取り扱いには、大きく分けて「再投資型」と「受取型」の2つのコースがある。それぞれの特徴を理解しよう。

再投資型:複利効果で雪だるま式に資産を増やす

再投資型は、受け取った分配金を現金化せず、自動的に同じ投資信託の購入に充てる方法である。最大のメリットは、人類最大の発明とも言われる「複利効果」を最大限に活用できる点にある。

分配金が再投資されると、その分だけ保有口数が増える。次に分配金が支払われる際には、元本に加えて「増えた口数(=前回の分配金)」からも新たな利益が生まれる。つまり、「利益が利益を生む」という好循環が生まれ、資産が雪だるま式に増えていく効果が期待できるのだ。特に、長期的な資産形成を目指す場合、この複利効果は絶大な威力を発揮する。

受取型:定期的にお小遣いを得る安心感

一方、受取型は、分配金を現金として証券口座や銀行口座で受け取る方法である。こちらのメリットは、定期的なキャッシュフローが生まれることだ。

受け取った分配金を生活費の足しにしたり、趣味や旅行に使ったりと、自由に活用できる。年金生活者など、資産を運用しながら一部を生活費として使いたい人にとっては、分かりやすく便利な選択肢と言えるだろう。ただし、再投資型と比べて資産の成長スピードは鈍化する。複利効果の恩恵を受けられないため、長期的に見ると資産総額に大きな差がつくことを理解しておく必要がある。

【シミュレーション】再投資と受取、20年後の資産はどれだけ違う?

言葉の説明だけでは、その差はイメージしにくいかもしれない。ここで、具体的なシミュレーションを見てみよう。その差は歴然とするはずだ。

【前提条件】

  • 投資元本:500万円(一括投資)
  • 想定リターン(トータル):年率5%
  • うち分配金利回り:年率2%
  • 期間:20年
  • 税金:NISA口座での運用を想定し、非課税とする

ケース1:分配金を「再投資」した場合

分配金(年率2%相当)を含めたトータルリターン(年率5%)のすべてが再投資され、複利で運用される。計算はシンプルに、500万円が年率5%で20年間成長するケースとなる。

20年後の資産額: 500万円 × (1.05)201,326万円

ケース2:分配金を「受取型」にした場合

トータルリターン年率5%のうち、2%分は毎年現金として受け取り、残りの3%分で資産が成長していくケースと考える。

  • 20年後の資産額: 500万円 × (1.03)20903万円
  • 20年間の受取分配金総額(概算): 毎年、その時点の評価額の2%を受け取るため、年々受取額は増える。ここでは簡略化し、当初元本500万円と最終資産額903万円の平均(約700万円)に対して計算すると、約700万円 × 2% × 20年 ≒ 280万円
  • 実質的な総資産: 903万円(運用資産) + 280万円(受取額) ≒ 1,183万円

結果は一目瞭然だ。20年後、再投資型は約1,326万円受取型は実質約1,183万円となり、約143万円もの差が生まれる。これこそが「複利効果」の力であり、長期投資において再投資がいかに重要であるかを示している。

見逃せない「税金」の話 – NISAなら非課税の恩恵を最大化

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA