投資信託の積立額、見直しのタイミングはいつ?
NISA制度を活用した投資信託の積立投資は、長期的な資産形成において非常に有効な手段である。しかし、一度始めた積立額をそのままにし続けるのが最適とは限らない。自身のライフステージの変化や市場環境に応じて、積立額を見直すことは、より効率的な資産形成に繋がる可能性がある。
本稿では、投資信託の積立額を「増やすべきタイミング」と「減らすべきタイミング」について、具体的なケースを解説していく。
積立額を増やすべきタイミング:資産形成を加速させる好機
積立額を増やすことは、基本的には推奨される行動である。特に、以下のタイミングは積立額を増やす絶好の機会と言えるだろう。
1. 収入が増加したとき(昇給・転職・副業など)
最も分かりやすいのは、収入が増加したタイミングである。昇給やより条件の良い会社への転職、あるいは副業を始めたことなどで手取り収入が増えた場合、その増加分の一部を投資に回すことで、将来の資産形成をより強力に後押しできる。
例えば、月5万円の積立額を投資していた人が、月3万円の収入増を得た場合、そのうち1万円でも積立額に上乗せできれば、年間12万円もの追加投資が可能となる。複利効果を考慮すれば、将来の資産額に大きな差を生むことになるだろう。
特に、NISA枠がまだ残っている場合は、積極的に活用したい。
2. ライフイベントによる支出減が見込まれるとき
住宅ローンを完済した、子供の教育費負担が一段落した、あるいは扶養から外れたなど、将来的に支出が減少する見込みがある場合も、積立額を増やす検討をすべきである。
計画的に支出を管理し、増加した可処分所得を投資に振り向けることで、資産形成のスピードを上げることができる。
3. 市場が暴落したとき(ただし冷静な判断が必要)
市場が大きく下落したタイミングは、一見すると積立額を減らすべきかのように思えるかもしれない。しかし、長期投資においては、むしろ積立額を「増やす」チャンスと捉えることもできる。
なぜなら、市場が暴落しているときは、投資信託の基準価額が安くなっているため、同じ金額を投資してもより多くの口数を購入できるからである。これは「ドルコスト平均法」のメリットを最大限に活かす戦略と言える。
ただし、このタイミングで積立額を増やすには、精神的な強さと、将来的な市場回復への確信が必要である。感情に流されず、冷静に判断することが重要だ。
積立額を減らすべきタイミング:原則はNG、例外ケースを慎重に検討
積立額を減らすことは、原則として推奨されない。なぜなら、積立額を減らすということは、将来の資産形成のペースを落とすことに他ならないからである。特に、NISA制度の非課税メリットを最大限に活かすためには、できるだけ多くの金額を非課税枠内で投資することが望ましい。
しかし、例外的に積立額の減額を検討すべきケースも存在する。それは、自身の生活基盤を維持することが困難になるほどの、やむを得ない状況に陥った場合である。
1. 予期せぬ大きな支出が発生したとき
病気や怪我による高額な医療費、あるいは自然災害など、予期せぬ大きな支出が発生し、手元の資金が著しく減少した場合、生活防衛資金(一般的に生活費の3~6ヶ月分)を確保するために、一時的に積立額を減額せざるを得ない場合がある。
この場合、まず生活防衛資金の確保を最優先し、状況が落ち着き次第、速やかに積立額を元に戻す、あるいは増額することを検討すべきである。
2. 収入が大幅に減少したとき
失業や病気による長期休職、あるいは事業の不振などにより、収入が大幅に減少した場合も、生活費を捻出するために積立額を減額せざるを得ない状況が考えられる。
この場合も、生活の維持を最優先し、収入が回復次第、速やかに積立額の回復・増額を検討することが重要である。
3. ライフイベントによる一時的な支出増
結婚や出産、住宅購入など、人生における大きなライフイベントは、一時的に支出を大きく増加させる。これらのイベントに備えるために、一時的に積立額を減額し、その分を貯蓄に回すという判断もあり得る。
ただし、これもあくまで一時的な対応とし、ライフイベントが落ち着いた後は、速やかに積立額を元に戻し、将来の資産形成を継続することが望ましい。
積立額減額の注意点
積立額の減額を検討する際は、以下の点に十分注意する必要がある。
- 生活防衛資金の枯渇: 積立額を減らしてまで生活費に充てる場合、生活防衛資金が底をつかないか慎重に判断する。
- 一時的な判断にとどめる: 減額はあくまで一時的な措置とし、状況が改善したら速やかに元の積立額に戻す、あるいは増額する計画を立てる。
- 投資方針の再確認: 減額・増額の判断をする前に、自身の投資目的やリスク許容度、投資期間などを再確認し、方針にブレがないか確認する。
積立額調整のタイミングを見極めるためのポイント
積立額の調整は、感情に流されず、客観的な視点で行うことが重要である。以下のポイントを意識することで、適切なタイミングを見極めることができるだろう。
- 定期的なポートフォリオの見直し: 年に一度など、定期的に自身の資産状況や投資ポートフォリオを見直す習慣をつける。
- ライフプランの更新: 結婚、出産、転職、退職など、ライフプランに変化があった際は、それに合わせて積立額も見直す。
- 市場動向の把握: 市場の暴落時などに冷静に対応できるよう、日頃から市場動向を把握しておく。ただし、短期的な市場の変動に一喜一憂しないことが肝要である。
- 専門家への相談: 自身での判断が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも有効な手段である。
結論:積立額調整は「増やす」を基本とし、「減らす」は慎重に
投資信託の積立額調整は、資産形成を最適化するための重要なプロセスである。基本的には、収入増加や支出減、あるいは市場暴落時などに「積立額を増やす」ことを積極的に検討すべきである。これにより、複利効果を最大化し、より早期に目標資産額を達成できる可能性が高まる。
一方、積立額を「減らす」ことは、原則として避けるべきである。やむを得ず減額する場合でも、それは一時的な対応にとどめ、生活基盤の維持を最優先し、状況が改善次第、速やかに積立額を回復・増額する計画を立てることが極めて重要である。自身のライフイベントや経済状況の変化を的確に捉え、冷静かつ戦略的に積立額を見直していくことが、NISA制度を最大限に活用し、将来の資産形成を成功させる鍵となるだろう。

