【入門】投資信託の基準価額って何?価格変動の仕組みを解説

投稿者: | 2025年10月14日

【超入門】投資信託の基準価額とは?価格が毎日変わる仕組みを専門家が徹底解説

NISA(ニーサ)をきっかけに投資信託を始めたものの、「毎日価格が変わって不安」「そもそも『基準価額』って何?」と感じている方も多いのではないだろうか。投資の世界には専門用語が多く、特に初心者にとっては価格の変動が大きなストレスになりがちである。しかし、その価格変動の仕組みを正しく理解すれば、日々の値動きに一喜一憂することなく、落ち着いて資産形成を続けることができる。

本記事では、投資信託の価格である「基準価額」がどのように決まり、なぜ変動するのか、その基本的な仕組みを金融用語が苦手な方にも分かりやすく解説する。この記事を最後まで読めば、価格変動の理由が明確になり、自信を持って投資と向き合えるようになるだろう。

投資信託の「値段」の正体、基準価額とは?

まず結論から言うと、基準価額とは「投資信託の値段」のことである。ただし、株式のように取引所の取引時間中にリアルタイムで価格が変動するものではない。基準価額は1日に1回だけ、その日の取引がすべて終了した後に算出・公表されるという特徴がある。

基準価額はどうやって計算されるのか

基準価額は、以下のシンプルな計算式で算出される。

基準価額 = 純資産総額 ÷ 総口数 × 10,000(口)

ここで重要なのが「純資産総額」と「総口数」という2つの要素である。投資信託は、多くの投資家から集めた資金をひとまとめにし、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資して運用する金融商品だ。この、ひとまとめにされた資産全体の価値が「純資産総額」である。

具体的には、投資信託が保有している株式や債券などの資産をすべて時価評価し、そこから信託報酬などの運用にかかるコストを差し引いたものが純資産総額となる。つまり、ファンドそのものの価値や規模を示す数字だと言える。

一方、「総口数」は、その投資信託がどれだけの量(口数)で投資家たちに保有されているかを示す。投資家が投資信託を購入すれば総口数は増え、解約(売却)すれば減少する。

投資信託は通常「1万口あたり」の価格で表示されるため、上記の計算式で算出される。多くの投資信託は設定当初、1口=1円、つまり1万口=10,000円からスタートする。その後の運用成果によって、この基準価額が10,000円から上下していくのである。

なぜ基準価額は毎日変動するのか?3つの主要因

では、なぜ基準価額は毎日変動するのだろうか。その主な要因は以下の3つである。この仕組みを理解することが、安心して投資を続けるための第一歩となる。

要因1:組み入れ資産の価格変動

最も大きな変動要因は、投資信託が保有している株式や債券といった資産そのものの価格変動である。例えば、国内株式に投資する投資信託であれば、日経平均株価やTOPIXといった株価指数の動きに大きく影響される。

国内外の経済ニュース、企業の業績発表、金利の動向など、さまざまな要因で株価や債券価格は日々変動する。これらの資産価格が上昇すれば、投資信託の純資産総額は増加し、結果として基準価額は上昇する。逆に、資産価格が下落すれば純資産総額は減少し、基準価額は下落する。これが価格変動の最も基本的な仕組みである。

要因2:為替レートの変動

外国の株式や債券に投資する投資信託の場合、為替レートの変動も基準価額に影響を与える。例えば、米国の株式に投資するファンドを考えてみよう。

仮に米国の株価が全く変動しなかったとしても、為替レートが1ドル=140円から1ドル=150円という「円安」に進めば、日本円に換算したときの資産価値は増加する。これにより純資産総額が増え、基準価額は上昇する。逆に、1ドル=130円という「円高」に進めば、円換算の資産価値は目減りし、基準価額は下落する要因となる。

このように、海外資産に投資する際は、投資対象国の資産価格だけでなく、為替の動きもリスク要因として考慮する必要がある。

要因3:分配金の支払い

意外と見落とされがちなのが、分配金の支払いによる基準価額の下落である。分配金とは、投資信託の運用で得られた収益の一部を、決算時に投資家へ還元するお金のことだ。

この分配金は、投資信託の資産(純資産総額)の中から支払われる。つまり、分配金が支払われると、その分だけファンドの資産が外部に流出するため、純資産総額が減少し、基準価額が強制的に下がるのである。

分配金が出たから儲かった」と単純に考えるのは早計だ。分配金は元本の一部を取り崩して支払われている可能性もあり、分配金の支払いによって下がった基準価額が、その後の運用で回復しなければ、実質的なリターンは得られない。特にNISAのつみたて投資枠などで長期的な資産形成を目指す場合は、分配金を再投資に回して複利効果を狙うのが一般的であり、分配金の有無よりもファンド全体の成長性に着目することが重要である。

基準価額の変動に一喜一憂しないための心構え

基準価額の変動仕組みを理解した上で、最後に大切な心構えを伝えたい。これを実践することで、目先の価格変動に惑わされず、長期的な視点で資産形成に取り組むことができる。

1.短期的な視点ではなく、長期的な視点を持つ

投資信託による資産形成は、数ヶ月や1年といった短期的な成果を求めるものではない。10年、20年といった長い時間をかけて、世界経済の成長の恩恵を受けながら資産を育てていくのが基本戦略である。日々の基準価額の上下は、長期的な成長過程における単なる「揺れ」に過ぎない。毎日の価格チェックはほどほどにし、どっしりと構える姿勢が重要だ。

2.リスクを理解し、分散を徹底する

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、リスク管理の基本は分散である。投資信託自体が多くの銘柄に分散投資された商品だが、さらに値動きの異なる複数の資産(国内株式、先進国株式、新興国株式、債券など)に投資するファンドを組み合わせることで、リスクをより低減できる。また、購入時期をずらす「時間の分散」(積立投資)は、価格変動リスクを平準化する上で非常に有効な手法である。

3.投資の目的を忘れない

なぜ投資を始めたのか、その目的を常に意識することが、精神的な安定につながる。「老後資金のため」「子どもの教育資金のため」といった明確なゴールがあれば、短期的な価格下落に直面しても、「これは長期的な目標達成のための過程だ」と冷静に捉えることができるだろう。

まとめ:仕組みを理解すれば、投資は怖くない

本記事では、投資信託の基準価額の基本的な仕組みと変動要因について解説した。最後に要点をまとめておこう。

  • 基準価額は投資信託の1万口あたりの値段であり、1日1回算出される。
  • 基準価額は「純資産総額 ÷ 総口数」で計算され、ファンドの価値そのものを反映する。
  • 主な変動要因は「組み入れ資産の価格変動」「為替レートの変動」「分配金の支払い」の3つである。
  • 日々の変動に惑わされず、長期・積立・分散でリスクをコントロールしながら、目的を見失わないことが成功の鍵となる。

投資の世界では、知識が最大の武器となる。基準価額仕組みを正しく理解することで、市場の変動を冷静に受け止め、着実な資産形成への道を歩むことができる。まずはご自身が保有している、あるいは検討している投資信託の目論見書を改めて確認し、どのような資産に投資しているのかを把握することから始めてみてはいかがだろうか。

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