投資初心者が避けるべき「ハイリスクな投資信託」の見分け方

投資信託は、多くの投資家にとって手軽に資産形成を始めるための有効な手段である。しかし、その手軽さゆえに、リスクを十分に理解しないまま投資信託を選んでしまい、結果として大きな損失を被るケースも少なくない。特に初心者にとっては、どのような投資信託がハイリスクであるのかを見分ける知識が不可欠である。本稿では、投資初心者が避けるべきハイリスクな投資信託の特徴と、その注意点について解説する。

1. 「ハイリスク」な投資信託とは何か？

投資信託における「ハイリスク」とは、一般的に価格変動が大きい、すなわち短期間で大きく値上がりする可能性がある一方で、大きく値下がりする可能性も高い投資信託を指す。リターンの源泉となる資産の性質や、運用方針、レバレッジの有無などがリスクの大きさに影響を与える。

2. 避けるべき投資信託のタイプ

2.1. 過度に複雑な仕組みを持つファンド

投資初心者が特に注意すべきは、仕組みが複雑で理解しにくい投資信託である。例えば、以下のようなファンドは、そのリスクを正確に把握するのが困難な場合がある。

デリバティブを多用するファンド: オプションや先物といったデリバティブ（金融派生商品）を組み合わせて運用するファンドは、その特性上、価格変動が大きくなりやすい。これらの金融派生商品は、原資産の価格変動以上に大きなリターン（または損失）を生み出す可能性があるため、仕組みを理解せずに投資すると予期せぬ損失を招くリスクがある。
レバレッジをかけたファンド: 投資額の数倍の規模で運用を行うレバレッジ型ファンドは、市場が予想通りに動けば大きな利益が期待できるが、逆に予想と反対方向に動いた場合は、投資元本を大きく上回る損失が発生する可能性がある。特に、毎日の基準価額に対して一定倍率のパフォーマンスを目指すファンド（例: インバース型、ブル・ベア型）は、複利効果により長期間保有すると想定外の値動きをすることがあるため、初心者には推奨できない。

2.2. 特定のテーマに特化した「テーマ型」投資信託

特定の産業（例: AI、再生可能エネルギー、宇宙開発）や地域（例: 新興国、特定の国）に投資対象を限定したテーマ型投資信託も、ハイリスクになりやすい。これらのファンドは、該当するテーマや地域が注目されている間は高いリターンを生む可能性があるが、そのテーマのブームが去ったり、地域経済が悪化したりすると、価格が大きく下落するリスクを抱えている。投資対象が限定されるため、分散投資の効果が薄れやすい点も注意が必要である。

2.3. 「毎月分配型」投資信託の落とし穴

毎月分配型投資信託は、毎月決まった額が分配金として支払われるため、一見すると安定した収入が得られるように見える。しかし、その分配金の原資が運用益だけでなく、投資元本の一部を取り崩して支払われる場合がある。元本払戻しが続くと、当初の投資元本が減少し、ファンドの基準価額も低下していく。さらに、分配金が支払われるたびに投資元本が減少するため、長期的に見ると複利効果が得られにくくなり、資産全体の成長を妨げる可能性がある。また、毎月分配型は信託報酬（手数料）が高めに設定されていることが多く、運用成績とのバランスを慎重に見極める必要がある。

3. その他の注意点

3.1. 「為替変動」リスク

海外の資産に投資する投資信託（外国籍投資信託や、海外資産への投資比率が高い国内籍投資信託）は、為替変動リスクにさらされる。例えば、円安になれば円換算での資産価値は上昇するが、円高になれば資産価値は下落する。特に新興国など、為替レートの変動が大きい国の資産に投資する場合、為替変動がリターンに与える影響は大きくなる。

3.2. 信託報酬（手数料）

投資信託には、保有期間中、信託報酬という形で継続的にコストがかかる。ハイリスクな投資信託や、運用が複雑なファンドほど、信託報酬が高く設定されている傾向がある。この信託報酬は、運用成績から差し引かれるため、長期的に見れば投資リターンの低下につながる。低コストで運用できるインデックスファンドなどと比較検討することが重要である。

3.3. 過去の運用成績に惑わされない

過去の運用成績が良いからといって、将来も同様のリターンが保証されるわけではない。むしろ、一時的に高いリターンを上げたファンドは、その背景に高いリスクを取っていた可能性がある。将来の市場環境の変化に対応できるかどうかも含めて、ファンドの特性を理解することが重要である。

4. 結論（まとめ）

投資初心者がハイリスクな投資信託を避けるためには、まず「仕組みが複雑すぎる」「特定のテーマに偏りすぎている」「毎月分配金が出るが、その実態は元本払戻しである」といった特徴を持つファンドには注意が必要である。また、為替変動リスクや、信託報酬といったコストにも目を向けるべきである。投資信託を選ぶ際は、目論見書などをよく読み、ファンドの目的、投資対象、リスク、コストなどを十分に理解した上で、自身の許容できるリスクの範囲内で、長期的な視点を持って投資を行うことが、失敗しないための鉄則である。まずは、低コストで分散投資が可能なインデックスファンドなどから始め、徐々に知識を深めていくことをお勧めする。