ボラティリティとは?投資リスクを数値で理解し、自分のリスク許容度に合ったファンドを選ぶ方法

投稿者: | 2025年11月30日

投資の「リスク」=「危険」ではない

投資の世界に足を踏み入れる際、多くの人が「リスク」という言葉に漠然とした不安を抱く。しかし、投資における「リスク」は、単なる「危険」や「損失の可能性」を意味するものではない。本質的には「リターンの不確実性(振れ幅)」を指す言葉である。

価格が大きく上昇する可能性もあれば、下落する可能性もある。この振れ幅の大きさを理解し、コントロールすることが資産形成の第一歩となる。本記事では、投資リスクの正体である「ボラティリティ」、それを測る「標準偏差」、そして自分自身がどれだけの不確実性に耐えられるかを示す「リスク許容度」について、初心者にも分かりやすく解説していく。

投資リスクの正体「ボラティリティ」を理解する

投資リスクを具体的に示す言葉が「ボラティリティ」である。これは、金融商品の価格変動の度合いを表す指標だ。

  • ボラティリティが高い:価格の振れ幅が大きいことを意味する。短期間で大きなリターンを狙える可能性がある一方、大きな損失を被る可能性も高まる。一般的に、株式や新興国の資産などが該当する。
  • ボラティリティが低い:価格の振れ幅が小さいことを意味する。大きなリターンは期待しにくいが、価格が安定しており、比較的損失のリスクも小さい。先進国の国債などが代表例である。

投資信託を選ぶ際、そのファンドがどのような資産に投資しているかを確認することで、おおよそのボラティリティを推測できる。例えば、全世界の株式に投資するファンドは、国内の債券に投資するファンドよりもボラティリティが高くなる傾向がある。

リスクを客観的な数値で測る「標準偏差」

ボラティリティという概念を、より具体的に数値で示したものが「標準偏差(σ)」である。これは統計学で使われる指標で、投資の世界では「リターンが平均値からどれくらいばらつく可能性があるか」を示している。

標準偏差の数値が大きければ大きいほど、リターンの振れ幅(ボラティリティ)が大きく、ハイリスク・ハイリターンな金融商品であると判断できる。逆に、数値が小さければ、リターンの振れ幅が小さく、ローリスク・ローリターンな傾向にあると言える。

多くの投資信託では、月次レポートや目論見書に過去一定期間の騰落率と合わせて標準偏差が記載されている。例えば、年間リターンの平均が5%、標準偏差が15%のファンドがあったとしよう。これは統計的に、年間のリターンが「約68%の確率で-10%から+20%の範囲に収まる(5% ± 15%)」、「約95%の確率で-25%から+35%の範囲に収まる(5% ± 15%×2)」と期待されることを意味する。

もちろん、これは過去のデータに基づく予測であり、将来を保証するものではない。しかし、異なるファンドのリスクを客観的に比較検討するための非常に有効なツールとなる。

あなたはどこまで耐えられるか?「リスク許容度」の自己分析

どれだけ優れた金融商品であっても、そのリスクが自身の許容範囲を超えていては、長期的な資産形成は難しい。そこで重要になるのが「リスク許容度」の把握である。

リスク許容度とは、資産価格が下落した際に、精神的にどれくらいの損失まで耐えられるかという度合いを示す。これは個人の状況によって大きく異なる。

リスク許容度を左右する主な要因

  1. 年齢と投資期間:一般的に、20代や30代のように投資期間を長く取れる場合は、一時的な価格下落があっても回復を待つ時間的余裕があるため、リスク許容度は高くなる。一方、退職が近い年代では、資産を取り崩す時期が迫っているため、許容度は低くなる傾向がある。
  2. 収入と資産状況:収入が高く、生活に余裕のある資金で投資できる場合は、リスク許容度は高い。逆に、余剰資金が少ない場合は、少しの損失でも生活に影響が出るため、許容度は低くなる。
  3. 投資経験:投資経験が豊富で、過去に価格の変動を経験したことがある人は、冷静に対処しやすいためリスク許容度が高い傾向にある。初心者は経験がない分、慎重になるのが自然である。

自分はどの程度のリスクなら受け入れられるのか。まずは冷静に自己分析することが、最適なファンド選びの土台となる。

冷静な判断を妨げる「投資心理」のワナ

リスク許容度を考える上で、人間の投資心理についても知っておく必要がある。行動経済学の「プロスペクト理論」によれば、人間は「利益を得る喜び」よりも「損失を被る苦痛」を2倍以上強く感じるとされている。

この心理的なバイアスにより、投資家は非合理的な行動を取りがちだ。例えば、少し利益が出るとすぐに売却して利益を確定したくなる一方、損失が出ている場合は「いつか戻るはずだ」と根拠なく保有し続け、損切りできずに損失を拡大させてしまうことがある。

市場が暴落した際にパニックに陥って売却してしまう「狼狽売り」も、この投資心理が引き起こす典型的な失敗例である。自分がどのような心理的ワナに陥りやすいかを知っておくだけでも、長期的な視点での冷静な判断を助けてくれるだろう。

結論:リスクを理解し、自分に合った投資を始めよう

投資のリスクは、正しく理解すれば過度に恐れる必要はない。それは「不確実性」であり、ボラティリティ標準偏差といった客観的な指標で大きさを測ることができる。

最も重要なのは、専門家が推奨するファンドや流行りの商品を鵜呑みにするのではなく、まず自分自身のリスク許容度をしっかりと見極めることだ。そして、その許容度の範囲内で、適切な標準偏差のファンドを選択することが、長期にわたる資産形成を成功させる鍵となる。

この記事を参考に、まずは自分がどの程度のリスクなら安心して投資を続けられるかを考え、投資信託の月次レポートで標準偏差を確認する、という具体的な一歩を踏み出してほしい。

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