NISAでこそ輝く「守りの投資」:債券型ファンドがポートフォリオのリスク分散に不可欠な理由

投稿者: | 2025年12月6日

NISAは「攻め」だけではない?「守りの投資」の重要性

2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)は、その非課税枠の大きさから、株式投資信託などを活用した積極的な資産形成、いわゆる「攻め」の投資に注目が集まりがちである。しかし、長期的な視点で安定した資産を築くためには、攻めと同様に「守り」の視点が不可欠となる。資産全体をポートフォリオとして捉え、攻めと守りのバランスを最適化することこそ、賢明な投資家の戦略と言えるだろう。そして、その守りの投資の中核を担うのが、今回解説する「債券型ファンド」である。

債券型ファンドとは何か?その基本的な仕組み

まず、投資信託の議論の前に「債券」そのものについて理解を深める必要がある。債券とは、国や地方公共団体、企業など(発行体)が、投資家から資金を借り入れるために発行する「借用証書」のようなものである。

債券の基本的な特徴

投資家は債券を購入することで発行体にお金を貸し、その見返りとして定期的に利子を受け取ることができる。そして、あらかじめ定められた満期日(償還日)を迎えると、投資した元本(額面金額)が返還されるのが原則だ。発行体が財政破綻しない限り元本割れのリスクは低いとされ、株式に比べて価格変動が穏やかなのが最大の特徴である。

債券型ファンドの役割

債券型ファンドとは、その名の通り、運用の専門家が投資家から集めた資金を元に、国内外の複数の債券に投資する投資信託のことである。個人で多種多様な債券を買い集めるのは困難だが、投資信託を利用すれば、少額から手軽に分散された債券ポートフォリオを構築できる。主な特徴は以下の通りだ。

  • 分散による信用リスクの低減:多数の債券に投資することで、特定の債券がデフォルト(債務不履行)に陥った場合の影響を限定的にできる。
  • 安定した収益源:主な収益は、保有する債券から得られる利子収入(インカムゲイン)である。これにより、安定した分配金が期待できる。
  • 価格変動による利益:金利の変動などにより債券の市場価格が変動するため、売買による利益(キャピタルゲイン)も狙えるが、株式に比べるとその変動幅は小さい。

なぜ今、債券型ファンドがポートフォリオに必要なのか

では、なぜNISAという非課税メリットを享受できる制度において、比較的リターンの穏やかな債券型ファンドを組み入れる意義があるのだろうか。その答えは「リスク分散」という投資の基本原則にある。

株式との「負の相関」によるリスク分散効果

投資の世界には「卵を一つのカゴに盛るな」という格言がある。これは、すべての資産を一つの投資対象に集中させると、それが下落した際に大きな損失を被るため、複数の異なる値動きをする資産に分散すべきだという教えだ。
ここで重要になるのが、株式と債券の値動きの関係性である。一般的に、景気が良く企業の業績拡大が期待される局面では、株価は上昇しやすい。一方で、このような状況では金利が上昇し、債券価格は下落する傾向がある。
逆に、景気が後退し先行きが不透明になると、投資家はリスクを避けるため株式を売り、より安全とされる国債などの債券を購入する動きが強まる。その結果、株価は下落し、債券価格は上昇する傾向が見られる。このように、株式と債券は異なる値動き(負の相関または低い相関)をすることが多い。この性質を利用し、ポートフォリオに両方を組み入れることで、片方の資産が下落した際にもう片方の資産がその下落を補い、資産全体の値動きを安定させる効果、すなわちリスク分散効果が期待できるのである。

精神的な安定をもたらす「守りの投資」

株式市場は時に大きく変動する。株式100%のポートフォリオでは、暴落局面で資産価値が大きく目減りし、不安から狼狽売りをしてしまう投資家も少なくない。しかし、ポートフォリオの一部に値動きの安定した債券型ファンドを組み入れておけば、資産全体の減少率を抑えることができる。この「クッション」の存在が、市場の混乱期においても冷静な判断を保つための精神的な支えとなり、長期的な投資の継続を可能にするのだ。これこそが守りの投資の真価と言えるだろう。

NISAで債券型ファンドを選ぶ際の注意点

債券型ファンドをポートフォリオに加えることを決めたら、次は具体的な商品選びとなる。いくつかの注意点を押さえておきたい。

対象となる債券の種類

債券型ファンドが投資する対象は様々だ。リスクを抑えたいのであれば、まずは為替リスクのない「国内債券型」が選択肢となる。より高いリターンを求める場合は、米国などの「先進国債券型」が考えられるが、為替変動のリスクを伴うことを理解しておく必要がある。新興国の債券はさらに高いリターンが期待できるが、その分リスクも格段に高くなるため、保守的な投資家は慎重に検討すべきである。

信託報酬などのコスト

債券型ファンドは、株式型に比べて期待リターンが低い傾向にある。そのため、運用にかかるコスト(信託報酬)がリターンに与える影響は相対的に大きくなる。商品を選ぶ際には、必ず信託報酬を確認し、可能な限り低コストのインデックスファンドを中心に比較検討することが重要だ。

まとめ:ポートフォリオに「守り」を加えて、賢明な資産形成を

債券型ファンドは、株式のように短期間で資産を倍増させるような派手なリターンを期待する商品ではない。しかし、その安定した値動きと株式との低い相関性は、市場の不確実性からあなたの資産を守る強力な盾となる。
NISAを活用した資産形成は、攻めの資産である株式投資だけでなく、守りの投資である債券型ファンドを適切に組み合わせることで、より強固で安定したものになる。自身のポートフォリオ全体を見渡し、リスク分散の観点から守りの資産が不足していないかを確認することから始めてみてはいかがだろうか。それが、長期にわたる資産形成を成功に導くための、確かな一歩となるはずだ。

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