「全世界株(除く日本)」を選ぶべき理由と、日本株を別で持つ戦略
投資において、資産配分は極めて重要な要素である。特に、日本に住む投資家であれば、自ずと日本市場への関心が高まり、日本株の比率を高く設定しがちである。しかし、それは本当に合理的な選択なのだろうか。本稿では、「全世界株(除く日本)」という投資信託の特性に触れながら、いわゆる「自国投資バイアス」の是非を論理的に解説し、日本株の比率を自分でコントロールしたいと考える投資家にとって最適なポートフォリオ構築戦略を提案する。
自国投資バイアスとは何か?
自国投資バイアス(Home Country Bias)とは、投資家が自身の居住国や、慣れ親しんだ国の資産に過度に投資する傾向を指す。日本に住む投資家であれば、日本国内の株式や債券への投資比率が、グローバルな資産配分における本来あるべき比率よりも高くなる現象がこれにあたる。
このバイアスが生じる背景には、いくつかの要因が考えられる。まず、情報へのアクセスの容易さである。自国の企業や経済情勢については、ニュースや報道を通じて情報が入りやすく、理解しやすい。次に、心理的な安心感。馴染みのある国や企業への投資は、未知の海外資産への投資に比べて安心感を与えやすい。また、為替リスクへの懸念から、どうしても自国通貨建ての資産を選びたくなるという心理も働く。
自国投資バイアスの弊害
一見すると、自国への投資は自然な行動のように思えるが、投資戦略としてはいくつかの弊害が指摘されている。その最大の理由は、リスク分散の観点からの非効率性である。
グローバルな視点で見ると、各国の経済や市場はそれぞれ異なるサイクルで動いている。ある国が不況に陥っても、他の国は好景気であるという状況は珍しくない。このように、互いに相関の低い資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを低減させることができる。しかし、自国投資バイアスが強く働くと、自国の市場が低迷した際に、ポートフォリオ全体が大きな影響を受けてしまうリスクが高まる。
さらに、機会損失も無視できない。世界経済は常に成長を続けているが、特定の国の経済成長率が他の国よりも著しく低い場合、その国に資金が偏っていると、より高いリターンを得られる機会を逃してしまう可能性がある。例えば、過去数十年の日本の株式市場のパフォーマンスは、米国をはじめとする先進国市場や新興国市場と比較して、必ずしも芳しいものではなかった。
「全世界株(除く日本)」の有効性
こうした自国投資バイアスを克服し、効率的な資産配分を実現するための有効な手段の一つとして、「全世界株(除く日本)」という投資信託が注目されている。
「全世界株(除く日本)」は、その名の通り、日本を除く全世界の株式市場に分散投資を行う投資信託である。これは、MSCI ACWI ex Japan Indexなどのインデックスに連動することを目指すものが一般的である。このファンドの最大のメリットは、地理的な分散効果を最大限に享受できる点にある。
日本以外の先進国(米国、欧州など)や、成長著しい新興国(アジア、ラテンアメリカなど)の株式に幅広く投資することで、単一国の市場リスクを低減し、世界経済全体の成長を取り込むことが可能となる。
また、「自国投資バイアス」に陥りにくい設計になっている点も重要である。購入者は、意識的に日本市場への配分を調整しない限り、自動的に日本以外の市場への投資比率が高まるため、グローバルな分散投資が実現しやすい。
日本株を別で持つ戦略:カスタマイズの妙
一方で、「全世界株(除く日本)」は日本株を含まないため、日本市場への投資を完全に排除することになる。しかし、「日本株の比率を自分でコントロールしたい」と考える投資家にとっては、むしろこの点が戦略的な柔軟性を生む。
具体的には、「全世界株(除く日本)」をコア資産としつつ、別途、日本株ファンドや個別日本株をポートフォリオに組み入れることで、日本株の比率を意図的に調整することが可能になる。この戦略は、以下のようなメリットをもたらす。
- 自国への愛着や応援の気持ち:日本経済の発展を応援したい、といった投資家の心情に沿うことができる。
- 日本市場の個別機会の追求:日本市場特有の成長機会や、割安な銘柄に投資したい場合に、柔軟に対応できる。
- ポートフォリオの最適化:グローバルな分散効果を確保しつつ、自国市場への配分を調整することで、リスク・リターンのバランスを投資家自身の考えに基づいて最適化できる。
例えば、グローバル市場の成長を取り込みつつ、日本経済の回復や特定のセクターの成長に期待して、ポートフォリオ全体の10%~20%程度を日本株に配分するといった調整が考えられる。この「除く日本」+「個別日本株」という組み合わせは、グローバル分散のメリットと、自国市場への戦略的な投資を両立させる、極めて合理的なアプローチと言えるだろう。
結論:賢く分散し、自分らしく投資する
投資における自国投資バイアスは、情報アクセスの容易さや心理的な安心感から生じやすいが、リスク分散の観点からは非効率であり、機会損失を招く可能性がある。「全世界株(除く日本)」は、このバイアスを克服し、グローバルな分散効果を効率的に享受できる優れた投資対象である。
しかし、日本株の比率を自分でコントロールしたいと考える投資家にとっては、「全世界株(除く日本)」をコアとしつつ、別途日本株を組み入れる戦略が有効である。これにより、グローバル分散のメリットを活かしながら、自国への投資機会も追求し、自分自身の投資目標やリスク許容度、さらには投資哲学に沿ったポートフォリオを構築することが可能となる。
賢く分散し、リスクを管理しながら、自分らしい投資スタイルを確立することが、長期的な資産形成への鍵となるだろう。

